組子と数学の関係Kumiko and Mathematics
「数学は美しい」という言葉がありますが、
組子の美しさは、この「数学の美しさ」の上に成り立っています。
組子が持つ規則的な幾何学模様の美しさは、分野や国、時代をも越えて、繋がり受け継がれています。
組子の中の数学
組子は、格子状に組みつけた桟の中に「葉っぱ」と呼ばれる小さな木の部品を様々な形にはめ込むことで幾何学模様を表現します。
釘を使わずに木片を組み付ける組子を製作するには、0.1mmの誤差も許さない精密な計算が必要不可欠です。
寸法から角度まで、計算され尽くした繊細なパーツを扱う職人たちは、日々数字と向き合いながら製作を行っています。
組子と数学は切っても切り離せない関係で繋がっているのです。
幾何学模様とは
幾何学模様とは、「三角形や方形などの図形で構成されている模様のこと ※」 です。
例えば、組子を代表する「麻の葉」は正六角形を基礎に構成されており、日本人に馴染み深い「七宝」は同じ大きさの円を四分の一ずつ重ねることで構成されています。
古来より、幾何学模様が施された日用品や工芸作品、建造物などが多く誕生しましたが、組子もその一部です。現代でも、表現方法のひとつとして幾何学模様は重要な役割を果たしています。
(※引用:weblio辞書 実用日本語表現辞典)
なぜ幾何学模様を美しいと感じるのか
かつてアリストテレスが『芸術は自然を模倣する』という言葉を残したように、私たち人間は自然界から美しさを見出します。
雪の結晶、植物の蕾、ミツバチの巣、…
これらは人の手が加わっていないにも関わらず、形が規則正しくパターン化しており、私たち人間はその中から数々の秩序や調和を感じとってきました。自然界には、そのような秩序や調和が当たり前に存在しているのです。
幾何学模様は秩序や調和によって構成されています。
私たちが幾何学模様を美しいと感じるのは、私達人間も自然界の一部としてその秩序や調和を内包し、その正確な数値から生まれるリズムが人間の感性に深く共鳴するからではないでしょうか。
組子×数学 掲載実績
過去には、数学にまつわる複数の場面でタニハタの組子が取り上げられました。
2016年には数学の教科書、2024年には島根県の高校入試に、タニハタの組子が用いられています。
また、数学を題材にしたNHK BSプレミアム番組の撮影が組子ショールーム(東京)内で行われるなど、各種場面で数学と組子の繋がりを感じることができます。
数学的な真実は、場所、文化や時代を超えて変わらないものであり、その不変性が美しさを感じさせる一因となっています。数学者のバートランド・ラッセルとポール・エルデシュは、数学の証明や調和、そして洗練された構造を通じて、数学の中に芸術的な美を見出しました。
「数学は美しい」という言葉がありますが、数学的な美しさは、単なる数字や公式の集合以上のものであり、それは人間の精神を高揚させ、喜びを与える源泉となっています。
組子細工もまた、緻密な計算と精密な手作業から生み出される幾何学的模様と、木の温もりや職人の技術が組み合わさった美しさで、私達に不変的な美が持つ喜びを与えてくれます。
組子が誕生したとされる飛鳥時代から現代に至るまで組子職人は寸法を測り、加工し、木片のすべてを隙間なく組み付ける仕事をしてきました。私達はこれからも数字と向き合い、美しい組子細工を日常生活の中で様々な形で使用されるよう努めてまいります。