10月末、職人達と共に新潟県へものづくり研修に行ってきました。
【一日目】 ●燕三条ものづくりメッセ 初日は、金物や洋食器作りが盛んなモノづくりの町<新潟県燕三条>で開催されている「ものづくりメッセ」 に行ってきました。
朝10時過ぎに入場。朝早い入場でしたが、新潟メッセ会場に入るとすでにかなり熱気・・・圧倒されました。
各ブースでは来場者の方に見てもらおうという工夫が感じられ、時間があっという間に過ぎていました。金型、ロボット、AI 、計測機械など様々なものが出品されており、「さすがモノづくりの町 燕三条」というイベントでした。 組子製作に役立つ道具もいろいろ出品されており、大変参考になりました。
●イタリアンレストランTsubamesanjoBit 昼食は、地元で三条で製造された食器やカトラリーを使った料理が出てくるということで楽しみにしてきました。 日本刀をイメージしたナイフは、MARUNAO(マルナオ)という企業のもの。厚みのある肉もスッと切れたのに驚きました。美味しいイタリアンを上質の食器で食べられるよい機会で心から堪能しました。
主役である食べ物を味わうのは勿論ですが、それを引き立てるインテリアや食器なども食事を楽しむ中でとても重要な要素。タニハタ組子もレストランへの納入事例が増えていますが、なぜオーナー様が組子をお選びになるのか・・・食事という体験の一部として、組子の繊細さや高級感がお店のイメージをアップさせる重要な役割を果たすのだと食事をしながら感じました。
天井装飾は、金属加工の際に発生する端材を使用したもの。処分される材料も工夫によって豪華なインテリアになり温かみのある感じの仕様になっています。これからのモノづくりは、作る側の工夫で、端材やゴミを極力出さないようにする工夫が必要だと感じました。
●三条鍛冶道場 和釘の製作体験をしました。
金物のまちとして広く知られている三条市は、その発祥をたどれば江戸時代の和釘づくりから始まったとのこと。 タニハタの職人達も伝統建築の一端を担うものとして和釘ワークショップに挑戦しました。
階折釘と巻頭を作るとのことで熟練の職人が手本を見せてくれたのですが、実際やってみるとかなり難しい… 普段と違う金槌の使い方に苦戦しスタッフの方に何度か直されたのが、木工職人として何とも言えない心境でした。 ただ・・出来上がった釘を見ると嬉しかったです。 タニハタの組子ワークショップも初めてのお客様がほとんどです。職人として組子体験にいらした方々にどのようにすればわかりやすく教えられるか考えるきっかけをいただきました。 弊社でも、お客様の満足度を上げる工夫をこれから話し合ってみたいです。
ちなみにここの和釘は、伊勢神宮で使用されており、次回の式年遷宮は2033年で20万本以上の和釘がここ三条から作られるとのことです。 新潟県中の小学生が必ず一度は和釘作りを体験するという面からも、この伝統技術を次の世代まで繋げようという意気込みを強く感じました。
●月岡温泉 華鳳様 富山から「温泉地」をイメージした場合、お隣石川県の温泉郷(和倉、山中、山代温泉、片山津)が出てくるのですが、今回の新潟訪問でイメージが大きく変わりました。部屋、料理、サービス、温泉の質・・・どれをとっても満足度が高く、自分の勉強不足を恥じました。
月岡温泉華鳳様 では、以前チャペルに納入させていただいた組子を見せていただきました。 マス目サイズが大きなピッチのものだったのですが、これによりモダンな印象を与えるのに加えて「写真にしたときに被写体が綺麗に見えるメリット」と感じました。
結婚式は新郎新婦二人の姿を撮影することが多いですが、遠くから撮影しても大柄であることで文様のマス目が写真上で潰れず、とても綺麗な文様だと分かります。 組子細工は細かい繊細な柄が美しいので、ついついお客様に小さなマス目をオススメしてしまうのですが、お客様の設置される空間の大きさをしっかりイメージして、マス目のご提案をしなければ・・・と感じました。
館内の内装は本当に素晴らしく格式高くまとまっていました。部屋から見える田園風景も素晴らしかったです。
【二日目】 ●大地の芸術祭 大地の芸術祭は、新潟越後で3年に一度行われる世界最大級の国際芸術祭。 旧6市町村(十日町、川西、中里、松代、松之山、津南)に300点以上点在するアート作品を巡って楽しむイベントです。
訪問した越後妻有里山現代美術館MONETでは、実際に手を使って触れて、動いているアート作品を見ました。人が持っている五感を駆使してみることで、アートをより身近に感じる…それを実感できた時間でした。
草間彌生さんの作品 すごい存在感でした。
●十日町市博物館 2020年に新しくなったこの博物館はとても美しく、また楽しい博物館でした。 展示されている国宝の火焔型土器は本当に素晴らしく、5000年前の縄文人のモノづくりへの情熱が伝わってくるようです。炎のカタチは、「器」としては装飾過多なのかもしれませんが、「私はこれを作りたいのだ」という縄文人の熱い声が聞こえてきそうでモノづくりをするものとしてとても感動しました。上写真の草間さんの作品にも通じるエネルギーを感じます。
縄文時代のモノづくりの道具。石斧を木に巻き付けて加工。この時代の職人魂に脱帽です。。
展示の仕方もいろいろ工夫されており、ここに昔から住んでいた新潟の方の生活に思いを馳せながら博物館を見てまわりました。 古い文様を製作するモノづくりの会社として、大変勉強になりました。 建物も雪の文様をあしらった美しいデザインでした。
●カールベンクスさん訪問
10年ほど前にカールさんの書籍を読んで「いつか行かなければ・・・」と思い、やっと実現することができました。 カールベンクスさん、奥様のクリスティーナさんは、1993年に新潟県十日町市竹所地区にあった築120年の古民家を購入し、自宅として再興。 約30年間、いまも奥様とふたりで暮らしておられます。
NHK Eテレ で数年前から定期的に放送されているのでご存じの方も多いと思いますが、カールさんの情熱と努力は、新潟県の古民家に新たな命を吹き込み、日本に昔からある伝統建築、木工技術、国産木材、限界集落の魅力を多くの人に発信し、私達日本人に「本当に素晴らしい宝ものは目の前にあるんだよ。」と静かに投げかけてくださいます。
もう長年NHKで継続して放送されているのは、 現代人の生き方に疑問を持っている方が多くなっており、彼の考え方に共感する方も増えているのだと感じます。(私もその一人です。) カールさんとお話している最中にもいろいろな方からお声がけや握手を求められて、気軽に接しておられるご様子からとても穏やかな方で多くの方に愛されているのが分かりました。 古民家を再生させるのは実際には大変なお仕事だと思いますが、カールさん、そして今回対応していただいた建築士の小野塚さん共々とても充実しているように見えました。
最近は古民家再生が日本全国で行われており、地域再生や観光復興の鍵としてもクローズアップされています。しかし、重要なことは、そこに以前から住んでいる方と共に行うこと。本来そこにあった文化や風土、そして「人」が守られていくことが最も重要だと感じました。
大変お忙しい中、再生された家の中を案内していただきました。 カールさん 小野塚さんに本当に感謝です。
最後に記念撮影させていただきました。
今回、新潟研修旅行では多くのことを学び、たくさんの刺激を受けました。 研修で学んだことを仕事や生活に生かし、新しいモノづくりに精進していきたいと思います。 今回研修旅行に関わってくださったすべての皆様に感謝申し上げます。