昨年秋の名古屋研修から約半年・・
タニハタでは定期的に「モノづくり」「木材」に関する出張勉強会を開催しており、今回は「作家と作品」をテーマにして研修プランを組み見学してきました。
今回見学した場所
1 国立工芸館 (金沢) 「ポケモン×工芸展-美とわざの大発見」展
2 石川県立伝統産業工芸館(金沢)
3 見城亭(食事 兼六園内)
4 木工房 バイハンド(木工作家 小松 研治先生工房)(富山)
5 富山県立美術館 棟方志功展
GW期間中ということもあり、全員参加とはなりませんでしたが、それでも19名の大人数での見学となりました。
最初の見学は、金沢にある「国立工芸館」で開催されている今話題の工芸企画展「ポケモン×工芸展-美とわざの大発見」。
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9時20分に到着。ここの建物は、日本海側初の国立美術館として、2020年10月に金沢市にて開館しました。モノづくりを生業とするものとして、京都や東京などではなく、富山から一時間余りで来ることができる金沢にこんな立派な展示施設が移転してきて本当にありがたく思います。
ここは、明治期に建てられた旧陸軍第九師団司令部庁舎と旧陸軍金沢偕行社の2つの古い建物を移築して再利用されている歴史ある建造物。名誉館長職には元サッカー選手の中田英寿氏が就任されています。
入り口で目をひいたのはイーブイとその進化形三匹。
ポケモンという2次元のベタ塗りの想像的生き物が、作家の感性を駆使して、3次元の我々の住む世界に生の質感をまといイキイキと飛び出してくる・・・。
アニメと工芸・・・ひとつ間違えばこの相反している制作物の企画・・・結構な波風が立ったろうなぁとこの企画を立てられた方のご苦労を感じました。
出展されている作品もかなり温度差があり、戸惑いながら製作されているものと、すごい熱量でもって製作されている作品、とかなり差があるようにも感じました。
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今回の企画展で最も私が感動したのはこの作品。
池田晃将氏の「未知文黒御影茶器」
h9.1 6.2×5.1cm
<漆、鮑貝、夜光貝、白蝶貝、螺鈿>
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組子細工もそのパーツや仕事の細かさに驚かれることが多いですが、この作品の細かさと美しさは別格。
近未来をイメージさせる螺鈿と漆の美しさ。。
ポケモン文字はちゃんと意味があるように並べられており、遠目にみるとポケモンの姿も浮き出てくるというもの。
この後、製作風景の動画をみたのですが、この文字を切り抜くのはなんとレーザーマシン。
パチパチと切り抜いた文字を一個一個手で貼り付けて、漆は重ねる作業。。それの繰り返し。
「伝統」と「革新」とはまさにこういうモノづくりのこと。素晴らしい。
次に石川県立伝統産業工芸館
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ここの展示物には「値札」が貼ってあり、「作品」というより「商品」寄りものが多く展示されていました。値札が付いていると「自分の生活の中で使うならば・・・」という視点で見ることができるので、ポケモン展とは又違った目線で工芸品を身近に楽しむことができました。
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「兼六園」は200年前、松平定信が宋時代の書物「洛陽(らくよう)名園記」に記載されている「相反する六つの景観(六勝)を兼ね備えている園」という文から名付けたそうです。
食事場所は、建築家 隈研吾氏設計による兼六園の新しい顔「見城亭」。
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北陸民家を大雪から支えてきた「サシモノ造り」で建物を補強しているそうです。
内装の色調も黒く統一し、落ち着いた雰囲気の中で食事することができました。
料理も上品で大変美味しくいただきました。
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壁に隈研吾氏のサイン。
「木格子」の建築物は、我々組子屋としても大変勉強になりました。
お昼過ぎて小松研治氏の工房へ
道具、工具、治具、部品、機械、部屋の調度品、猫のお墓、ご仏壇、小さなネジ1本まで・・・すべてと言っていいほど小松先生のカラーで製作、収集され、それらは驚くほど美しく機能的に配置されており、先生からお話しを聞いてその配置の謎が解ける・・・というミステリーツアーのような工房探検でした。
答えを聞くたびに「すごい!」という声。
木工を生業とするものとしてワクワクが止まらない素晴らしい時間。
小さな空間なのに大きなテーマパークのアトラクションの中を歩き回っているような、そんな錯覚にまで陥りました。
たくさんの学びをいただきました。
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最後に 富山県立美術館で開催されている「棟方志功展 」を見学。
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棟方志功は、1945年から6年8カ月間、富山県南砺市(旧福光町)に疎開。
民藝の巨匠たちや富山県の人々との交流が、棟方志功の作品に大きな影響を与えていったそうです。
すごいエネルギーを感じる作品が多く、最後まで圧倒されました。
今回、いろいろな場所を見学させていただきましたが見学の後も余韻が残る見学会になりました。
私以外の若い職人達もいろいろな影響を受けたようで今回急遽企画して良かったと思いました。
また、写真撮影可能の美術展が増えたことも本当にありがたいことです。
また、秋にでも見学会を行いたいと思います。