中国・北京に行ってきました。
当社が生業としている「組子」技術は飛鳥時代に仏教(寺院建築)の伝来と共にそのベースとなる木工技術も共に入ってきたと考えらえています。
しかし、現在残っている数々の組子文様は、どこからどこまでがその影響を受けているのか・・書物の中からしかよくわからない・・というのが本当のところでした。
昨年、台湾の国立故宮博物院で数々の宝物の文様をみたときに、この宝物が実際に使用されていた建築部分(歴代の皇帝が住んでいた紫禁城)も自分の目で見てこなければ・・と痛感。あれから10ヶ月経過してやっと実現しました。
そういう訳で、紫禁城、明の十三陵など世界遺産の数々(古い文様やデザイン、格子の数々)を見てきました。
有名な天安門広場は、紫禁城の正門です。
先日、テロ事件があったせいなのか、かなりの警戒態勢です。
(私の左肩にもその文字が・・)
ここに向かう地下鉄や入り口など、何度もセキュリティチェックがありました。
(表情が険しい・・)
最初に・・中国一の木造建築、「大和殿」。
重要な政治的な儀式はここで行われました。
映画「ラストエンペラー」でも印象的にこの場所が使われていましたね。
ちなみに中国で縁起の良い色はというと・・・
「黄」天子を象徴する色
「緑」は中国国家の色で、元気、健康
「赤」は慶事の色
上記になり、王族が住むここの建築物にもこの色が主に使用されています。
中国の古い建物(宮殿や寺院)の屋根には上のような「走獣」という魔除けの飾りがついています。
動物の数は建物の格式が高くなるほど増えていきます。
中国で一番数が多いのは太和殿の10匹だそうです。
排水溝です。口から水が出ます。現代の味気ない雨といよりはよほど洒落ています。
いろいろな場所で動物の飾りをみることができますが、「魔除け」という意味が大きいとのこと。
(うっかり見逃しそうな・・人間くさい・・作り手の思いがこもっている隅々のこだわりに私はとても惹かれます。)
故宮は何度も大火災に見舞われているので、あっちこっちに大きな水瓶がありました。
日時計。
昔は皇帝だけが全国標準時間を決めることができたそうです。皇帝の正当性のシンボルでもあります。
いろいろな格子を見ることができました。
縁起の良い亀の甲羅(亀甲)模様。
天井格子 建物全体の強度を保つ機能もありましたが、権威の象徴でもありました。
子をあやす雄の獅子。微笑ましいですね。
獅子は皇帝の尊厳や権威を表すそうです。
親子獅子をみて、うちで飼っているネコ達を思い出しました。
(うちの猫に権威は全く感じられませんが。。)
「龍」は皇帝を意味します。
瓦のひとつひとつに龍も文様が。。
皇帝がかぶる冠にも龍の細工が。
天井にも大きな龍。。
古来の中国では、「民(一般人)」はこの龍の模様を使用することが許されませんでした。
(使用すると死罪でした。)
昨年、台湾の国立故宮博物院で聞いたのですが、皇帝が使用する龍の爪の数は「5本」。しかし3本なら民間人にも許されたそうです。
3本爪の龍は、「龍」と見られなかったようでして。
ちなみに日本の龍は「3本爪」です。。。(韓国は4本)
「項羽と劉邦」がテレビドラマで放映されていますが、漢(2200年前)の初代皇帝「劉邦」は龍の生まれ変わりと言われました。この劉邦の頃から皇帝=龍を意味するようになったとのことです。
この頃にできた龍のデザインは、現在使用されている龍とほぼ同じ。
角は鹿、耳は牛、目はウサギ、頭はラクダ、胴は蛇、ウロコは鯉、足は虎、爪は鷹・・
これが龍の本仕様(!?)だそうです。
玉座や王冠、衣服・・皇帝の身につけるもの、使用するものすべてに「龍」が施されていました。
「龍」が皇帝を表すなら皇后は「鳳凰(鶴に似た架空の鳥)」。皇后が使用する場所や道具には「鳳凰」の柄が使用されました。
紫禁城の中で皇帝、皇后、側室など皇族が私的生活をする場所を「内廷」と言います。
ここに来るまでは木々などがほとんどなく、少し殺伐した感じだったのですが、
「内廷」に入ると木が豊富に植えられており、一息つきました。
(やっぱり木は人間にとってなくてはならないものですね。)
皇帝が使用する道具はおかかえの職人が製作したのですが、いい加減なものを作ると簡単に
死罪になったそうです。
命がけのモノヅクリ。。
緊張感のある素晴らしい作品が残っている本当の理由かもしれません。
ちなみに中国雑伎団のショーも夜に見ました。
人間業と思えないような、ショーの数々に本当に感動しました。
帰りに中国のガイドさんから
「こういうショーをやらせたら今、世界一なのは中国ではありませんよ。
北朝鮮です。向こうは命がけですから。。」
という言葉を聞きました。
「命がけ」の技術習得・・。
日本のモノづくりはどうだろうか?
帰りの飛行機でいろいろ考えながら帰ってきました。