組子の主要木材 Wood
タニハタ組子に使用する木材は主に国産材の「杉」と「ヒノキ」となります。
杉材は、木目が鮮明で美しく、使うほど味わいがでます。
ヒノキは、世界で最も古い木造建築「法隆寺」に使用されている木材で
耐久性もあり、日本人に長く愛されてきた木材です。
基本木材
木材 | 産地 | 特徴 | 色 | 価格 |
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吉野杉 赤身材 | 奈良県川上村 | 年輪が詰まっていて節がなく、色が美しいことから建具材としても評価の高い木材。タニハタ では赤身部分の良材だけを厳選して使用します。 | 淡紅色~赤褐色 | ★★ |
ヒノキ 源平材 | 岐阜県東濃 | 東濃は室町時代からのヒノキの産地。 木目が細かく均一で、比較的品質も安定しており、当社が最も使用している木材です。 | 淡白色~淡紅色 | ★★ |
木曽ヒノキ 源平材 | 長野県木曽町 | 高貴な香りと美しい木肌を持ったヒノキの高級ブランド。 全国の有名神社・仏閣、城に使用されています。 | 淡白色~淡紅色 | ★★★★ |
利休杉 | 富山県~北陸 | タニハタで開発した水溶液に木材を浸し、木の含有成分に働きかけて発色させたオリジナル木材です。化学薬品、塗料は含みません。 古い茶室のような枯淡な趣で、杉材の魅力を引き出しました。 | 焦茶色~灰褐色 | ★★★★ |
特注木材<美術組子、麻の葉ちらしシリーズTAタイプにのみ使用>
木材 | 産地 | 特徴 | 色 | 価格 |
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屋久杉 | 鹿児島県屋久島 | 「屋久杉」は、世界自然遺産・屋久島に自生する樹齢千年以上の天然杉。 現在伐採は禁止されているため、江戸時代に伐採され森に放置されていた「土埋木」を使用します。 希少価値が極めて高く、木目の間隔が0. 数ミリと細かく、樹脂成分を多く含みます。 | 茶褐色 | ★★★★★ |
神代杉 | 日本全土 | 二千年以上地中に埋没していた杉で、経年変化した灰褐色の木肌は、モノトーンの空間や美術組子の部分使いにお勧めです。 | 灰褐色~茶褐色 | ★★★★★ |
朴ノ木 | 日本全土 | モクレン科の広葉樹。割れや狂いの少ない木材です。 中に納めた刀を錆びさせない性質があると言われ、日本では刀の鞘に使用されてきました。薄い緑色の木肌が美術組子の表現の幅を広げます。 | 薄い緑色 | ★★★★ |
タニハタでは、環境問題の観点から2018 年より輸入木材の使用をやめ、主材料を長野県木曽地域、岐阜県東濃地域、奈良県吉野地域といった日本屈指の木材産地のものを使用し ております。(年に数回、谷端自ら木材産地にまで足を運び、自分で選んだ組子用木材を競り落として良質の木材を仕入れます。)
等級は、「四面無節 建具用」という最高級の部位を使用しており、これはマグロでいうところの「大トロ」のような希少部位になります。
充分に乾燥させたその木材を工場内で組子職人がさらに厳しく選別し、製品設置後に反りやねじれの問題がおきないように万全の体制で製作しております。
杉
「日本の杉」の学名は「クリプトメリア・ジャポニカ」Cryptomeria japonica。「隠された日本の財産」 という意味になります。
この名称の由来のように「日本の杉」は縄文時代から貴重な資源として使用されてきました。
杉は成長が早く60~80年位で成木になる木で、日本で最も多く植林されている木材でもあります。
日本には秋田、吉野、屋久島など有名な杉産地(地域品種)があります。
タニハタでは、富山~北陸地域の地杉(源平材)、および吉野地域の杉(赤身)を使用しております。
組子にする杉材の条件は(タニハタの場合)
- 木目がまっすぐに素直であること。
節や白太、曲がりやすい「アテ」は使用しません。 - 木目の詰んだ(細かい目)であること。
これは大径木(樹齢の長い木)からしか取ることができません。取れる部分も限られているため希少です。 - 色みが美しいこと。
組子は塗装するのが難しく、無塗装仕様が基本となります。鉋をかけ光沢がでた状態のものを使用するために、色みの美しさが重要になります。
杉の場合、特に色のばらつきがあります。ほんのり赤身がかかった色~薄めの茶色の杉を選んで使用します。
神代杉とは
「神代杉」は地面の中に数百年から数千年埋まっていた杉です。
過去の火山噴火活動で地中または湖沼中に埋没し、奇跡的に腐敗しなかった貴重な木材です。
長い時間をかけて変色した神々しいまでの黒褐色の木肌は見るだけで威厳を感じさせます。
ヒノキ以上に希少価値が高く、市場にはほとんど出回っておりません。特に色味の濃い「黒神代」は日本で最も高価な木材と言えます。
ヒノキ
ヒノキについて
耐久性・保存性が高いヒノキは古くから日本中の宮殿、寺院仏閣の材料として使用されてきました。
世界で一番古い木造建築「法隆寺」には1300年以上前のヒノキが今も使用されています。昭和の大修理の際、1300年以上経ったヒノキにかんなをかけたところ、新品のヒノキと同じ香りがしたそうです。なめらかで美しい質感、高貴な香り・色味は個人、業者を問わず多くの日本人を魅了する木材です。
タニハタでは、赤身(約7割)、白太(約3割)が混ざった岐阜産の源平材(紅白の色を意味します)と木曽産ヒノキ(源平材)の2種類、ご用意しております。<ヒノキ源平材>はコストパフォーマンスが良く、赤身と白太の色味の差が少ないので、組子の材料として最もおすすめです。
日本を代表するヒノキの産地は、「木曽」にあります。
映画「火天の城」では職人役の西田敏行が、織田信長に命じられて安土城築城に使う太い木曽ヒノキを探しにこの森に入りますが、当時は黙って木を切ると死罪になることから、「ヒノキ一本、首一つ」と言われたそうです。死にものぐるいで木曽ヒノキの良材を探している姿が印象的でした。
木曽ヒノキの平均樹齢280年(150年以上の天然林を指します)は、他の木材にはないその独特の香り、光沢、肌目の美しさを持ち伊勢神宮や出雲大社などの建築用材としても重用されています。
その貴重さから今も伐採規制、立ち入り禁止規制があり、組子用のヒノキは一般の木材市場には、ほとんど出回ってきません。
タニハタでは独自の木材ルートで、組子用のヒノキを確保・在庫しております。
ヒノキから取れる天然由来の成分をヒノキチオールと言います。ヒノキチオールには強力な抗菌性があり、カビの発育を阻止しアトピー性皮膚炎などの症状を緩和できるとされています。
源平材とは?
木の断面、樹芯の周りの赤い部分を「赤身」と言い、外側の白い部分を「白太」と言います。
この赤身と白太が混ざった木材が源平材です。
源平という名前は、その昔、鎌倉時代に源氏が白旗、平家が赤旗を掲げて戦ったことに由来しています。
<ヒノキ源平材>は赤身と白太の色味の差が少ないので、組子の材料として最もおすすめです。
タニハタでは、組子製品の主材料に「国産木材」を使用しています。
詳しくは地球温暖化対策<国産木材を守る>について
木材のもつ機能について
木は他の素材とちがい、人間と同じように呼吸して、時間とともに成長する、人間に1番近い素材と言われています。
特にムク・白木(塗装をしていない)材料は切って商品にした後も呼吸(部屋の調湿作用)をおこない、
木の本来の香りを放ち、やさしい色合い・ ぬくもりは人の心を和ませ、使用するほどに味わいがでてきます。
また、天然の木の色は目に最も優しい色とも言われています。
木の部屋に入ると心が和むのはそういう「色」「香り」「温かみのある質感」を
コンクリートに囲まれた現代人が必要としているからかもしれません。
木(白木)には左の写真のようにキズを復元する機能が備わっています。 しかし呼吸する(木が収縮をくり返す)ことがムク・白木材の長所でもあり短所でもあります。湿度の多い時期、少ない時期、また乾燥した大平洋側、雪の多い日本海側、室内、屋外など時期、地域、使用される場所により商品が使用中に微妙に変化します。
木が裸の状態である白木は木の良さを最も感じることができる反面、デリケートなものでもあります。
(ちなみに家具やドアなどに使用されることが多いウレタン塗装などは木の表面に膜を作ることで木の劣化を防ぎます。ただし、上記にあげた木の特徴はなくなります。※1)
現在、市場に出回っている商品は貼りモノが主流です。
MDFやLVLなど人工木材の基板材料に、木目印刷した塩化ビニールや紙を貼って木のようにしています。
最近の室内に使用されているドアや枠材などは現在、ほとんどがこれです。印刷技術が発達して凹凸などもあり、 一見、本当の木にみえます。
木の特徴はなくなりますが、大量生産向き 品質が安定する 安価という特徴があります。少しグレードの高いものになると本物の木をスライスしたものを貼ってより木に近くしています。
上記のような工場で作られら人工木材に対してタニハタでは天然林、人工林を合わせて「天然材」と呼んで区別しています。
木材の選別について
タニハタのらんま、間仕切り、建具などは全品針葉樹を使用しています。基本的に塗装を施さない組子商品には、カンナ仕上がりの綺麗な針葉樹が使用されます。
木材の最大の欠点のひとつは、アテ(曲がりが強い部分)が多いのでよく選別しなくてはなりません。曲がった木の部分というのは誰でも選別することができますが、「曲がりそうなまっすぐな木」を選別するのが大変なのです。
木目や重さ、温度(アテ材は少し冷たい)、質感を見ながら1本1本、職人が選別します。
それでも木は曲がる場合があります。曲がりそうな木は曲がっても問題がない部材へ使用したりします。
人間と同じで木も全て良材ばかりではありません。
欠点のある素材の方が多いのが実情です。
そんな素材でも使う場所によっては問題なく使用することができます。当店の選別作業はそこまでの(どこにどの素材を使用するかを決める)作業を言います。貴重な限られた天然資源を無駄なく使用するよう職人一同心掛けています。
木の仕上げの方法は商品により違います。通常、材料を引き割った後、荒挽き(写真)、プレーナーという機械で荒削りします。コストが限定されている商品の場合、この中で特に仕上がりの悪いものだけをカンナで削ります。 (表面をサンドペーパーで仕上げることもあります。) 欄間(ランマ)は基本的には全てカンナをかけます。